OM3 マルチモード光ファイバー ケーブルとは?使用するメリットを解説!

OM3 マルチモード光ファイバーケーブルとは、マルチモードの一種で、特に高速データ通信向けに設計された規格です。現代のギガビットイーサネットや10ギガビットイーサネットなどの高速ネットワークで、より高速な通信をサポートするために開発されました。
今日の製造業においてIoTやAIの導入が進む中、大量のデータ通信をいかに効率的かつ安定的に行うかが重要な課題となっています。
特に、高速で信頼性の高いネットワーク環境の構築は、生産性向上や競争力強化に直結します。
このような背景から、光ケーブルの活用が注目されていますが、なかでも「OM3光ケーブル」という種類を耳にする機会が増えているのではないでしょうか。
この記事では、製造業の技術担当者の皆様に向けて、OM3光ケーブルの基礎知識から、選定のポイント、導入するメリットまでをわかりやすくご紹介いたします。
OM3とは?
光ファイバーケーブルは、内部を伝搬する光の経路の違いによって「シングルモード」と「マルチモード」に分かれます。
シングルモードは光ファイバーの中心部のみを光が通り、マルチモードは光の伝送経路が複数あって分散されて通ります。
OM3(Optical Multimode 3)とは、マルチモードの一種で、特に高速データ通信向けに設計された規格です。
現代のギガビットイーサネットや10ギガビットイーサネットなどの高速ネットワークで、より高速な通信をサポートするために開発されました
データセンターやLAN、SANで広く利用されています。
OM3の主な特徴
一般的なガラス製の光ファイバーケーブルであり、その中心にあるコアと呼ばれる部分の直径が50マイクロメートルであることが特徴で、より多くの光信号を効率的に伝送することが可能です。 また、OM1やOM2などとの互換性があるため、既存のシステムに統合することが可能です。
OM1、OM2、OM3、OM4、OM5の違いについて
光ファイバーケーブルには、用途や性能に応じてOM1、OM2、OM3、OM4、OM5といったさまざまな規格が存在します。
これらはすべてマルチモード光ファイバーに分類されますが、それぞれ伝送速度や伝送距離、ケーブルの構造などに違いがあります。
※尚、この記事で記載している数値は一般的な値となります。製品ごとの仕様は、製品詳細ページにてご確認ください。
OM1
コア径が62.5マイクロメートルの最も古い規格です。
主に100Mbpsイーサネットやギガビットイーサネット(1Gbps)で使用されていました。
現在では、より高速な通信が求められる環境ではあまり使用されません。
OM2
OM1と同じコア径62.5マイクロメートルですが、伝送損失を低減するための改良が加えられています。
ギガビットイーサネットに対応しますが、10ギガビットイーサネットには対応できない、または非常に短い距離に限られます。
OM3
コア径50マイクロメートルで、850nmのVCSEL(垂直共振器面発光レーザー)最適化されています。
10ギガビットイーサネットで最大300メートル、40ギガビットイーサネットおよび100ギガビットイーサネットで最大100メートルの伝送が可能です。
特に、データセンターや製造工場など、高帯域幅が必要な環境で広く採用されています。
OM4
OM3のさらなる改良版で、同じくコア径50マイクロメートルです。
OM3よりも帯域幅が広く、10ギガビットイーサネットで最大550メートル、40ギガビットイーサネットおよび100ギガビットイーサネットで最大150メートルの伝送が可能です。
より長距離の高速通信に適しています。
OM5
最新のマルチモード光ファイバー規格で、コア径はOM3およびOM4と同じ50マイクロメートルです。
SWDM(Shortwave Wavelength Division Multiplexing)技術をサポートしており、2本のファイバーで最大400Gbpsの伝送が可能です。
特にデータセンターでの超高速・短距離伝送に適しています。
OM1、OM2、OM3、OM4、OM5マルチファイバーの伝送距離について
マルチモード光ファイバーケーブルの伝送距離は、その規格と使用するイーサネットの種類によって大きく異なります。
以下に、一般的な伝送距離の目安を示します。
ファイバータイプ | 100Mbps イーサネット |
1Gbps イーサネット |
10Gbps イーサネット |
40Gbps イーサネット |
100Gbps イーサネット |
OM1 | 2,000m | 275m | 33m | 不可 | 不可 |
OM2 | 2,000m | 550m | 82m | 不可 | 不可 |
OM3 | 2,000m | 550m | 300m | 100m | 70m |
OM4 | 2,000m | 550m | 550m | 150m | 150m |
OM5 | 2,000m | 550m | 550m | 150m (400Gbpsで400m) |
150m (400Gbpsで400m) |
この表からわかるように、OM3光ケーブルは、10ギガビットイーサネット環境において最大300メートルの伝送距離をサポートし、製造現場の多くのニーズに対応できることがわかります。
OM4はさらに長距離に対応しますが、コストを考慮するとOM3が選択されるケースも多いでしょう。
OM3 光ケーブルを使用するメリット
製造業においてOM3光ケーブルを導入することには、さまざまなメリットがあります。
特に次の3つのメリットが大きいでしょう。
高帯域幅機能
OM3光ケーブルの最大のメリットは、その高い帯域幅機能です。
10Gbps、40Gbps、さらには100Gbpsといった高速なデータ伝送に対応できるため、製造現場で増加する一方のデータ量に対応できます。
たとえば、高精細な監視カメラ映像のリアルタイム伝送、多数のセンサーからのデータ収集、あるいはクラウドベースのMES(製造実行システム)との連携など、大容量のデータを迅速にやり取りする必要がある場面で、その性能を最大限に発揮します。
これにより、生産プロセスの最適化や、より精密な品質管理を実現できます。
コスト効率
初期導入コストだけを見ると、シングルモード光ファイバーの方が安価に見えるかもしれません。
しかし、マルチモード光ファイバーは一般的にシングルモード光ファイバーに比べて、接続に使用するトランシーバーやその他の機器が安価です。
特に短距離から中距離(データセンターや工場内など)での高速伝送を考えた場合、OM3光ケーブルは費用対効果に優れています。
製造業においては、設備投資の回収期間も重要な要素となるため、このコスト効率の良さは大きなメリットとなるでしょう。
インストールの容易さと互換性
OM3光ケーブルは、ほかのマルチモード光ファイバーと同様に、比較的、容易にインストールできます。
また、既存のマルチモード光ファイバーシステムとの互換性も高く、段階的なネットワークのアップグレードを検討している製造業者にとっては、既存資産を有効活用しながら高性能化を進められるというメリットがあります。
光ケーブルの種類と選び方については、下記の記事もご覧ください。
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まとめ
OM3光ケーブルは、高い帯域幅機能、コスト効率、インストールの容易さから、今日の製造業における高速かつ安定したネットワーク環境構築に最適なソリューションの一つといえます。
IoTやAIの進化により、製造現場におけるデータ通信の重要性はますます高まる傾向にあります。
OM3光ケーブルの導入は、生産性の向上、品質管理の強化、そして競争力の向上に大きく貢献する可能性を秘めているといえるでしょう。